→ 用語集インデックス |
治験・臨床試験 &医薬品開発用語集 |
ドラッグ・デリバリーシステム(DDB) |
Drug Delivery System |
解説(1) |
ドラッグ・デリバリーシステムとは? |
目標とする患部(臓器や組織、細胞、病原体など)に、薬物を効果的かつ集中的に送り込む技術。 薬剤を膜などで包むことにより、途中で吸収・分解されることなく患部に到達させ、患部で薬剤を放出して治療効果を高める手法。 「薬物送達システム」、 |
解説(2) |
ドラッグ・デリバリーシステムのメリット |
ドラッグ・デリバリーシステム(以下、DDS)は、薬剤の治療効果を高めるだけでなく、 通常、薬物は体内で吸収・分解されたり、 つまり、患部に薬物が到達できるかどうかは、いわば成り行きまかせで、人為的にコントロールできるものではありませんでした。 しかし、だからと言って、患部に到達すべき薬物量から逆算して、投与すべき薬物量を決めると、その投与量は非常に多いものとなり、薬物有害反応の発現リスクが高くなってしまいます。 一般的に、薬剤は、 そこで、 副作用を防止すると同時に、投与量も少なくて済むのでとても効率が良い技術で、薬剤の行き先もかなりコントロールできるので、最も期待されている投薬方法の一つとなっています。 |
解説(3) |
DDSとナノテクノロジー |
DDSで中心となる技術は、ナノテクノロジー(超微細技術)です。 微量の薬剤を包み込み、毛細血管の微小な穴を通り抜けることができる、数十ナノメートル程度のカプセル(ナノは10億分の1)。 このような「超微細物質」を作る技術は、手先が器用で精密機器の開発を得意とする日本には、まさにうってつけの技術だと言われています。 バイオ技術では米国に大きく差をつけられましたが、ナノテクノロジーでは、逆に米国に差をつけることができるのではないかと、 現在最も期待されており、産官学が連携して開発に乗り出しています。 そして、そのナノテクノロジーの応用分野として、最も利益が見込めるのが、医薬品開発分野なのです。 |
解説(4) |
DDSと抗がん剤 |
DDSの適用薬剤としては、副作用の防止、治療効果を高めるという点から、特に「抗がん剤」分野が期待されています。 例えば、抗がん剤でのDDSの仕組みは以下の通りです @ がん細胞を発見して結合する性質を持つ特殊な分子を、微小カプセルの表面にあらかじめ付けておく。 A カプセルは毛細血管の微小な穴をなんなく通り抜ける。 B 患部に到達したカプセルは、がん細胞に付着してから、抗がん剤を放出する。 もちろん、他の疾患薬においても、ほぼ同様の仕組みです。 |
解説(5) |
DDSにおいて要求される機能 |
(1)封じ込め機能 運搬媒体(超微小カプセル等)に、薬剤を安定的に封じ込めること。 体内での運搬途中で、薬剤が漏れ出さないようにしなければなりません。 |
(2)非吸収機能 目標となる部位に至る途中で、消化管などから吸収・分解されないこと。 消化管からの吸収を避けるため、あらかじめ、別の物質に化学構造を変えておき、体内あるいは目標部位に到達してから元の化合物に戻って、薬効効果を発揮(活性化)するように、薬剤を設計しておく方法もあります。 このように科学的に修飾された薬剤を「プロドラッグ」と呼びます。 |
(3)運搬機能 目標とする患部(臓器や組織、細胞、病原体など)まで、安定して確実に運搬できること。 目的の患部に確実に到達できなければ、どんなに薬効の優れた物質であっても意味がありません。 言い換えれば、目標となる患部以外には、絶対に到達しない、という性質です。 目的の場所にクスリを運ぶ性質のある運搬体(キャリア)が通常用いられます。 |
(4)活性機能 (3)のような運搬場所のコントロールができない場合の対処。 ● 目標となる患部以外では作用しない ● 病巣部位においてのみ、活性化され効果を発揮する という性質が必要です。 個々の細胞表面には、ある種の物質だけを引きつける(結合する)「受容体」(リセプター)というものが存在します。 例えば、癌細胞の受容体にだけ結合する物質がわかれば、その物質と結合させた薬物を送ると癌細胞にだけ集まるので、集中的に癌細胞だけを攻撃することができます。 |
(5)放出機能 患部に到達した時点で、薬物を放出する必要があります。 薬剤が溶け出すタイミングを、投与してからの経過時間によってコントロールすることを、「放出制御」と言います。 目標とする患部にて、必要十分量の薬物を取り込めることが、薬剤の効果を高める上で、重要な要素になります。 ここで重要なのは、薬効が現れる濃度以上、毒性が現れる濃度以下の「必要十分量」の薬物を取り込めるかどうかという点です。 あまり高濃度の薬物が放出されると、逆に薬物有害反応を引き起こす可能性があります。 |
解説(6) |
DDSと製品価値の最大化 |
先発品メーカーは、DDS(Drug Delivery System) 機能を薬剤に追加することにより、ジェネリックメーカーには簡単には追随できない、高機能かつ有効性の高い医薬品に変身させることができます。 これが、製品価値の最大化です。 |
医薬品の製品価値 関連用語 |
医薬品のライフサイクル |
医薬品のライフサイクルマネジメント |
製品のライフサイクルマネジメント |
物質特許 |
製法特許 |
(医薬品の)特許期間 |
ジェネリック |
戻る/ジャンプ |
→ 用語集インデックス |