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許容できない重篤な副作用(薬物有害反応)を起こさない範囲で、患者が耐えられる最大の投与量。

最大耐用量」、「最大耐量」とも言います。

主に抗がん剤の投与量に対して使われる概念です。

この「耐えられる」という言葉が微妙で、

「精神的に耐えられる」というよりも、
「肉体的に耐えられる」かどうかが、
問題となります。

また、「最大耐性量」とは、許容できない重篤な副作用、つまり不可逆的な副作用(たとえば昏睡・死亡)が発生するかどうかの「限界の一歩手間」となる投与量なので、調べるのには相当の慎重さが求められます。

 
 

たとえば、抗がん剤を投与することにより、臨床効果が現れてくる時には、脱毛、骨髄抑制、消化器毒性(嘔吐等)などの副作用も、程度の差はあれ、同時に現れます。

抗がん剤の量を増やせば、当然、臨床効果(がん細胞の死滅)はさらに高くなりますが、それ以上に、体と精神が副作用に耐えられません。

したがって、医療現場では、最大耐性量を超えない範囲で投与されることになります。

いくら治療の必要性があるとはいえ、医療の現場において、薬があまり効いていないからと、実験的に投与量をいくらでも増やしていいという訳ではないからです。

では、「最大耐性量」は、どうやって決めるのでしょう?

患者による臨床試験で、実際に投与して「最大耐性量」を調べるしかありません。

「最大耐性量」を調べる臨床試験では、被験者の状態を慎重に観察しながら、少しずつ投与量を増やしていくという「漸増法」が用いられます。

抗がん剤の候補物質の場合は、その副作用が強いため、第T相から実際の患者が試験対象となります。

 
 

通常の疾患の治療薬では、「最大耐性量」まで調べたりはしません。

もっと軽い副作用が出た時点で投与を中止します。

その時点でも、十分な治療効果が見られるので、それ以上副作用のリスクを冒してまで、投与を続ける必要がないのです。

一方、抗がん剤の場合は、効果が出始めるとほぼ同時に副作用も起こり始めます。

不可逆的な重大な副作用が出るぐらいの投与量を増やしても、癌細胞への効果も上がっていくので、「投与限界」を調べざるを得ないのです。

 
 

臨床試験によって得られた最大耐性量から、医療現場における抗がん剤の標準的な投与量至適用量」(至適投与量
が決定されます。

→ 至適用量

 
 

なお、既存の抗がん剤では治癒の見込みがまったくない患者や末期患者が被験者だからといって、「どんな無謀な試験をしてもいい」という訳ではありません。

重篤な副作用が発現するまで、つまり、後戻りできない死や昏睡をエンドポイントとして、無条件で投与量を増やしていっていい、というのではないということです。

それこそ、殺人行為に等しく、倫理的に問題があります。

患者の状態を観察しながら、慎重に増やしていき、重篤な副作用の兆候が出れば、当然、その手前で中止されます。

→ エンドポイント

抗がん剤の臨床試験のガイドラインの記述より。

「第T相試験の第一の目的は、非臨床試験の結果より臨床導入を予定している投与法について、最大耐性量(MTD)と第U相試験のための推奨容量(RD)または最大許容量(MAD)を推定すること」

 
 
忍容性
安全性
最大継続可能量(MRD)
至適用量(至適投与量)
漸増試験
重篤な副作用
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