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治験・臨床試験 Q&A集 |
第T相試験で健康な成人を対象とするのはなぜか? |
回答 |
主に安全性を調べるための治験段階であり、患者では万一の場合のリスクが高い |
第T相試験の対象者(治験参加者)は、健康な成人(健常者)と指定されていますが、 @ 短期間で集めやすい 健康な成人の場合、特定の疾患を持つ患者を集めるのに比べて、比較的短期間に治験参加者を集めることができる。 A 併用薬の影響がない 健康な成人の場合、疾病を持たないので、治験薬の作用に影響する他の薬剤を投与(服用)している可能性が低い。 従って、正確に治験薬の安全性・薬物動態を確認できる。 B 副作用対策 万一、副作用(薬物有害反応)が発生した場合、患者に比べて、症状に耐えられ、症状が悪化しにくく、また治癒しやすい。 C 体力があり、頻繁な検査に耐えられる 第T相試験では、安全性だけでなく、薬物動態の検査も同時に行われる。 吸収・分布・代謝・排泄や標的器官への到達時間、到達量などを明らかにするため、採血やその他の検査を頻繁に行う必要があり、健康な成人であれば、容易にそれに耐えることができる。 |
関連用語 |
健常人 |
第T相試験 |
薬物の体内動態(ADME) |
薬物動態試験(PK試験) |
PK/PD試験 (薬物動態/薬力学試験) |
臨床薬理試験 |
生物学的同等性試験 |
安全性 |
副作用 |
薬物有害反応(ADR) |
反復投与試験 |
漸増試験 |
単回投与試験 |
第U相試験 |
第V相試験 |
補足(1) |
例外 |
抗癌剤の治験の第T相試験では、健康な人を試験対象とすることは、逆に禁じられています。 抗癌剤は、毒性の強い物質を使ってがん細胞を死滅させようとしますが、同時に健康な細胞まで攻撃してしまうので、身体は大きなダメージを受けます。 そのため抗癌剤の副作用は、他の疾患の医薬品に比べて強力で、健常者に投与すれば、健康を確実に害してしまうことが最初から分かっているのです。 まれに起きる副作用と、確実に起きる副作用とでは、倫理的に大きな違いがあります。 確実に副作用が起きることが予想されるのであれば、安全性を確かめるために健常者に抗がん剤を投与することは、身体を傷つける行為にほかならず、認められないのです。 |
また、抗癌剤は、効き目が高い薬でよく見られるように、有効量と副作用が起こる量が近接していて、投与コントロールが難しいという特徴もあり、その点においても、副作用発現のリスクが高まります。 従って、抗癌剤に限り、第T相の段階から患者(癌患者)を対象に試験が行われます。 もし、今後、抗癌剤以外に、 強い副作用を持つ新薬が開発された場合、抗癌剤と同様に、第T相から患者を対象に試験が行われることでしょう。 |
補足(2) |
軽度の患者を対象とする第T相試験もある |
第T相においては、健康に全く問題のない「健常人」だけでなく、ごく軽度の患者(正確に言うなら患者予備軍)を対象とした試験が実施される場合があります。 症状が「軽度」であり、治療が直ちに必要と判定されるほどでなければ、「健常人」として、第T相試験に参加させることができます。 |
では、なぜわざわざ軽度の症状の患者を、被験者として採用するのでしょうか? それは、対象疾患患者への効果の傾向を事前に少しでも調べておきたいからです。 軽度の症状を持つ患者予備軍において効果があることが分かれば、治験依頼者(製薬企業等)は、患者を対象とした次の第U相試験に、安心して進むことができます。 もちろん、軽度の患者であっても、治験上は、健常者としてのデータ、単なる第T相試験のデータとして扱われます。 この時点で画期的な効果が見られても、申請手続き上のメリットはありません。 結局、 第U相以降で患者での効果を証明しなければなりません。 |
それでも、効果の見当をつけるという目的において、軽度の患者を第T相で採用するのは、それなりに十分意味があることだといえます。 もし、第T相で何ら効果が見られなかったら、その新薬候補物質の効果は疑わしいということになります。 第U相に進まず、第T相で開発(治験)を中止すれば、製薬企業はそれ以上の無駄な出費を抑えることができます。 これより先に進むべきかどうか、「Goか No Goか」を選択する上で重要な情報を、第T相の段階で得ることができるので、軽度の患者を採用した第T相試験は、医薬品開発企業にとって、賢い方法だと言えるでしょう。 |
なお、たとえ軽度の患者ではあっても、謝礼・賠償・補償等も含め、第T相試験参加に関わる全ての手続きにおいて、通常の「健常者」と全く同じ扱いになります。 また、第T相試験において、軽度の患者を被験者とする場合であっても、通常の第T相試験と同様、安全性や最大耐性用量を確認するのが主目的です。 二次的な目的として、新薬候補物質が、軽度の患者に与える影響(効果)の程度や傾向を、事前にざっと調査しておこう、ということであり、疾患の治療を目指している訳ではありません。 そもそも第T相の段階では、治療に最適な用量さえ未定の状態なので、軽度の患者は、治療効果を期待して参加するべきではないでしょう。 あくまでも、「軽度の患者」というのは、第T相試験の参加資格にすぎないということです。 |
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関連リンク集 |
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