医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令
(医療機器GCP)

 第四十六条第一項の治験審査委員会(以下この条において「治験審査委員会」という。)は、第四十九条第一項の規定により実施医療機関の長から意見を聴かれたときは、審査の対象とされる治験が倫理的及び科学的に妥当であるかどうかその他当該治験が当該実施医療機関において行うのに適当であるかどうかを、次に掲げる資料に基づき審査し、文書により意見を述べなければならない。

一 第十条第一項各号又は第二十一条各号に掲げる文書

二 被験者の募集の手順に関する資料

三 第七条第五項又は第十八条第四項に規定する情報その他治験を適正に行うために重要な情報を記載した文書

四 治験責任医師等となるべき者の履歴書

五 その他当該治験審査委員会が必要と認める資料

2 専門治験審査委員会は、第四十九条第四項の規定により実施医療機関の長から意見を聴かれたときは、審査の対象とされる特定の専門的事項について前項各号に掲げる資料(当該専門治験審査委員会が必要と認めるものに限る。)に基づき審査し、文書により意見を述べなければならない。
3 治験審査委員会及び専門治験審査委員会は、前条第一項又は第二項の規定により実施医療機関の長から意見を聴かれたときは、治験審査委員会にあっては当該実施医療機関において当該治験が適切に行われているかどうかを調査した上で当該実施医療機関において治験を継続して行うことの適否を、専門治験審査委員会にあっては意見を聴かれた特定の専門的事項について調査をした上で当該治験を継続して行うことの適否の判断の前提となる専門的事項をそれぞれ審査し、意見を聴かれた事項に係る事態の緊急性に応じて速やかに、文書により意見を述べなければならない。
4 治験審査委員会は、前条第四項の規定により実施医療機関の長から意見を聴かれたときは、当該実施医療機関において当該治験が適切に行われているかどうか又は適切に行われていたかどうかについて審査し、文書により意見を述べなければならない。

5 第四十九条第四項の規定により実施医療機関の長が専門治験審査委員会の意見を聴いた場合においては、治験審査委員会は、第一項又は第三項の規定により意見を述べるに当たり、同条第五項(前条第三項において準用する場合を含む。)の規定により報告された当該専門治験審査委員会の意見を踏まえて、これを行わなければならない。

6 実施医療機関の長は、第一項又は第三項の規定による治験審査委員会の意見を治験の依頼をしようとする者又は治験依頼者及び治験責任医師となるべき者又は治験責任医師に文書により通知しなければならない。
7 実施医療機関の長は、第一項、第三項又は第四項の規定による治験審査委員会の意見を自ら治験を実施しようとする者又は自ら治験を実施する者に文書により通知しなければならない。

8 第六項の規定による文書による通知については、第十条第二項から第五項までの規定を準用する。

この場合において、これらの規定中「治験の依頼をしようとする者」とあるのは「実施医療機関の長」と、「実施医療機関の長」とあるのは「治験の依頼をしようとする者又は治験依頼者」と読み替えるものとする。

 
 

1 治験審査委員会は、全ての被験者の人権の保護、安全の保持及び福祉の向上を図ること。

社会的に弱い立場にある者を被験者とする可能性のある治験には特に注意を払うこと。

2 治験審査委員会は、その責務の遂行のために、審査対象として以下の最新の文書を実施医療機関の長等から入手すること(専門治験審査委員会にあっては、専門治験審査委員会が必要と認めるものに限る。)。

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1)治験の依頼をしようとする者による治験においては第10条第1項各号に掲げる文書。

ア)治験実施計画書

イ)治験機器概要書及び治験使用機器(被験機器を除く。)に係る科学的知見を記載した文書

ウ)症例報告書の見本(治験実施計画書において、症例報告書に記載すべき事項が十分に読み取れる場合は、当該治験実施計画書をもって症例報告書の見本に関する事項を含むものと解してよい。)

エ)説明文書(説明文書と同意文書は一体化した文書又は一式の文書として取扱われたいこと(第2条の解説18の1)のイ)及びウ)を参照。)

オ)治験責任医師等の氏名を記載した文書
(治験責任医師となるべき者がその要件を満たすことを証明した履歴書及びその他の文書並びに治験分担医師となるべき者の氏名リスト(治験審査委員会が必要と認める場合には治験分担医師の履歴書))

カ)治験の費用の負担について説明した文書(被験者への支払(支払がある場合)に関する資料)

なお、治験審査委員会が必要と認める場合、治験依頼者から支払われることが予定されている治験費用に関する資料の提出を求めることができる。

キ)被験者等の健康被害の補償について説明した文書

ク)その他の必要な文書

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2)自ら治験を実施しようとする者による治験においては第21条各号に掲げる文書。

ア)治験実施計画書

イ) 治験機器概要書(第19条第2項の規定により改訂されたものを含む。)及び治験使用機器(被験機器を除く。)に係る科学的知見を記載した文書

ウ)症例報告書の見本(治験実施計画書において、症例報告書に記載すべき事項が十分に読み取れる場合は、当該治験実施計画書をもって症例報告書の見本に関する事項を含むものと解してよい。)

エ)説明文書

オ)モニタリングに関する手順書

カ)監査に関する計画書及び業務に関する手順書

キ)治験分担医師となるべき者の氏名を記載した文書

ク)治験使用機器の管理に関する事項を記載した文書

ケ)この省令の規定により自ら治験を実施する者及び実施医療機関に従事する者が行う通知に関する事項を記載した文書

コ)治験の費用に関する事項を記載した文書(第21条の解説の10を参照)

サ)被験者等の健康被害の補償に関する事項を記載した文書

シ)実施医療機関が自ら治験を実施する者の求めに応じて第61条第2項各号に掲げる記録(文書を含む。)を閲覧に供する旨を記載した文書ス)実施医療機関がこの省令又は治験実施計画書に違反することにより適正な治験に支障を及ぼしたと認める場合(第66条に規定する場合を除く。)には、自ら治験を実施する者は治験を中止することができる旨を記載した文書セ)その他治験が適正かつ円滑に行われることを確保するために必要な事項を記載した文書

注)第28条第3項又は第39条第3項により治験実施計画書・治験機器概要書が、第74条第2項により説明文書が改訂される場合がある。

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3)被験者の募集手順(広告等)に関する資料。

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4)被験者の安全等に係る報告(第7条第5項又は第18条第4項に規定する情報その他治験を適正に行うために重要な情報を記載した文書(第50条第2項参照))。

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5)治験責任医師等となるべき者の履歴書(調査審議に必要な場合には治験分担医師の履歴書)。

治験責任医師等となるべき者の履歴書には、当該治験責任医師等の学歴とともに、過去に治験責任医師等その他医学的な専門家として治験に参加した経歴等や学会の認定医等の情報も含んだものであることが望ましい。

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6)その他治験審査委員会が必要と認める資料(企業との連携がある場合、利益相反に関する資料等)。

3 治験審査委員会は、第49条第1項又は第4項の規定により、意見を聴かれたときは、倫理的、科学的及び医学的観点から治験の実施について適切な期間内に審査を行い、その意見を文書で表明し、実施医療機関の長に通知すること。

文書には審査対象の治験、審査した資料、審査日及び当該治験に対する治験審査委員会の意見が原則として次の1)から3)のいずれに該当するかについて明確に示されていなければならない。

1)承認する。
2)修正の上で承認する。
3)却下する。

なお、専門治験審査委員会においては、治験の実施の適否の判断の前提となる特定の専門的事項について、上記の意見の提示の仕方が適切でない場合は、上記以外の陳述等により意見を述べることも妨げられるものではない。

4 治験審査委員会は、実施医療機関が十分な臨床観察及び試験検査を行うことができ、かつ、緊急時に必要な措置を採ることができるなど当該治験を適切に実施することができるか否かを検討すること。

5 治験審査委員会は、治験責任医師等が当該治験を実施する上で適格であるか否かをその最新の履歴書等により検討すること。
6 治験審査委員会は、被験者の人権の保護、安全の保持及び福祉の向上を図る上で追加の情報が意味のある寄与をすると判断した場合には、説明文書に求められる事項(第71条参照)以上の情報を被験者に提供するように要求することができる。

7 被験者の代諾者の同意に基づき、被験者に対して直接の臨床的利益が予期されない非治療的な内容の治験が行われることが計画されている場合(第7条第2項及び第18条第2項参照)には、治験審査委員会は、提出された治験実施計画書及びその他の文書が、関連する倫理的問題を適切に配慮しており、かつ第7条第2項又は第18条第2項の規定に従っているものであることを確認すること。

なお、治験審査委員会の承認文書中に、同意を得ることが困難な者を対象とすることを承認する旨が明記されていること(第47条第2項参照)。

8 被験者及びその代諾者の事前の同意を得ることが不可能な緊急状況下における救命的な内容の治験が行われることが計画されている場合(第7条第3項及び第18条第3項参照)には、治験審査委員会は、提出された治験実施計画書及びその他の文書が、関連する倫理的問題を適切に配慮しており、かつ第7条第3項又は第18条第3項の規定に従っているものであることを確認すること。

なお、治験審査委員会の承認文書中に、被験者及び代諾者の同意なしに治験に参加する際の人権の保護、安全の保持及び福祉の向上を図るための方法が明記されていること(第47条第2項参照)。

9 治験審査委員会は、被験者に対する金銭等の支払がある場合には、その支払額及び支払方法を審査し、これらが被験者に治験への参加を強制したり、不当な影響を及ぼさないことを確認すること。

被験者への金銭等の支払は、参加期間等によって案分されなければならず、被験者が治験を完遂しなければ支払が全くなされないような方法は不適当である。

10 治験審査委員会は、被験者に対する金銭等の支払がある場合には、その支払方法、支払金額、支払時期等の情報が説明文書に記述されていることを確認し、参加期間等による案分の方法が明記されていることを確認すること。

11 治験審査委員会は、必要と認める場合は、実施医療機関の長に治験依頼者から支払われることが予定されている治験費用又は自ら治験を実施する者が確保する治験費用に関する資料の提出を求め、その内容及び支払方法又は確保の方法を審査し、これらが適正であるか否かを確認することができる。

この場合において、治験依頼者等は、求められた資料を実施医療機関の長に提出すること。

12 専門治験審査委員会は、第49条第4項の規定により実施医療機関の長から意見を聴かれた場合には、当該意見を聴かれた専門的事項の科学的、倫理的妥当性について意見を述べること。

なお、専門治験審査委員会においては、治験の実施の適否の判断の前提となる特定の専門的事項に関する調査審議について、3から11までの規定を準用すること。

 
 

1 治験審査員会及び専門治験審査委員会は、第50条第1項又は第2項の規定により意見を聴かれた場合には、それぞれ意見を聴かれた事項に係る事態の緊急性に応じて、速やかに意見を述べること。

2 治験審査委員会は、第50条第1項又は第2項の規定により実施医療機関の長から治験の継続の適否について意見を聴かれたときは、当該治験の実施状況について必要に応じて調査した上、倫理的、科学的及び医学的観点から、治験の継続について事態の緊急性に応じて速やかに審査を行い、その意見を文書で表明し、実施医療機関の長に通知すること。

文書には審査対象の治験、審査した資料、審査日及び当該治験に対する治験審査委員会の意見が原則として次の1)から3)のいずれに該当するかについて明確に示されていること。

1)承認する。
2)修正の上で承認する。
3)既に承認した事項を取り消す(治験の中止又は中断を含む。)。

なお、専門治験審査委員会においては、治験の継続の適否の判断の前提となる特定の専門的事項について、上記の意見の提示の仕方が適切でない場合は、上記以外の陳述等により意見を述べることも妨げられるものではない。

3 治験審査委員会及び専門治験審査委員会が、事態の緊急性ゆえに速やかに意見を述べる事項について、あらかじめ、第47条第2項に規定する手順書により明確にしておくこと。

4 治験依頼者による治験においては、あらかじめ治験依頼者、治験審査委員会及び実施医療機関の長の合意が得られている場合には、第28条第2項及び第3項に関する治験を継続して行うことの適否についての意見に限り、治験審査委員会は、実施医療機関の長に加えて治験責任医師及び治験依頼者にも同時に文書により意見を述べることができる。

この場合、本条第6項の規定に基づき、治験審査委員会の意見を実施医療機関の長が治験依頼者及び治験責任医師に文書により通知したものとみなす。

5 自ら治験を実施する者が実施する治験においては、あらかじめ自ら治験を実施する者、治験審査委員会及び実施医療機関の長の合意が得られている場合には、第39条第2項に関する治験を継続して行うことの適否についての意見に限り、治験審査委員会は、実施医療機関の長に加えて自ら治験を実施する者にも同時に文書により意見を述べることができる。

この場合、本条第7項の規定に基づき、治験審査委員会の意見を実施医療機関の長が自ら治験を実施する者に文書により通知したものとみなす。

 
 

1 治験審査委員会は、自ら治験を実施する者が実施する治験について、実施医療機関の長から意見を聴かれたときは、当該治験が適切に行われているかどうか又は適切に行われていたかどうかについて適切な期間内に審査し、文書により実施医療機関の長に意見を述べること。

なお、本項の趣旨は、モニタリング又は監査が適切に実施されたことを確認するための規定であり、自ら治験を実施する者が行う治験が適切に行われたことについて、モニタリング又は監査に関して、治験審査委員会による確認も合わせて実施することにより、モニタリング、監査及び治験審査委員会が相互に点検する趣旨のものである。

 
 

1 治験審査委員会は、第49条第4項の規定により実施医療機関の長が専門治験審査委員会の意見を聴いた場合には、第49条第5項(第50条第3項において準用する場合を含む。)の規定により実施医療機関の長から報告された専門治験審査委員会の意見を踏まえて、当該実施医療機関における地域的特性、当該実施医療機関において被験者となる集団の特性等その他当該実施医療機関に固有の事項について考慮した上で、当該治験を実施又は継続することの適否についての意見を述べること。

2 実施医療機関の長に対して治験の実施又は継続の適否について最終的な意見を述べる治験審査委員会は、第49条第1項の規定により意見を聴く治験審査委員会である。

3 治験審査委員会は、専門治験審査委員会の意見を十分に尊重した上で、治験の実施又は継続の適否についての意見を述べること。
 
 

1 実施医療機関の長は、治験審査委員会が治験の実施を承認する決定を下し、その旨を通知してきた場合には、これに基づく実施医療機関の長の指示、決定を、当該治験審査委員会が承認したことを証する文書とともに、治験の依頼をしようとする者による治験においては治験の依頼をしようとする者及び治験責任医師となるべき者に、自ら治験を実施しようとする者による治験においては自ら治験を実施しようとする者に、文書で通知すること。

2 実施医療機関の長は、治験審査委員会が治験実施計画書、説明文書及びその他の手順について、何らかの修正を条件に治験の実施を承認する決定を下し、その旨を通知してきた場合には、これに基づく実施医療機関の長の指示、決定を、当該治験審査委員会が修正を条件に承認したことを証する文書とともに、治験の依頼をしようとする者による治験においては治験の依頼をしようとする者及び治験責任医師となるべき者に、自ら治験を実施しようとする者による治験においては自ら治験を実施しようとする者に、文書で通知すること。

3 実施医療機関の長は、治験審査委員会が治験の実施を却下する決定を下し、その旨を通知してきた場合には、治験の実施を了承できない旨の実施医療機関の長の決定を、治験審査委員会が却下したことを証する文書とともに、治験の依頼をしようとする者による治験においては治験の依頼をしようとする者及び治験責任医師となるべき者に、自ら治験を実施しようとする者による治験においては自ら治験を実施しようとする者に、速やかに文書で通知すること。

また、実施医療機関の長は、治験審査委員会の決定について、治験の依頼をしようとする者による治験においては治験の依頼をしようとする者及び治験責任医師となるべき者に、自ら治験を実施しようとする者による治験においては自ら治験を実施しようとする者に、文書で詳細に説明すること。

4 実施医療機関の長は、治験審査委員会が実施中の治験の継続審査等において、治験の継続を承認する決定を下し、又は治験実施計画書、説明文書及びその他の手順について何らかの修正を条件に治験の継続を承認する決定を下し、その旨を通知してきた場合には、これに基づく実施医療機関の長の指示、決定を、当該治験審査委員会が承認したことを証する文書又は修正を条件に承認したことを証する文書とともに、治験依頼者による治験においては治験依頼者及び治験責任医師に、自ら治験を実施する者による治験においては自ら治験を実施する者に、文書で通知すること。

5 実施医療機関の長は、治験審査委員会が実施中の治験の継続審査等において、治験審査委員会が既に承認した事項の取消し(治験の中止又は中断を含む。)の決定を下し、その旨を通知してきた場合には、これに基づく実施医療機関の長の指示、決定を、治験審査委員会が取り消したことを証する文書とともに、治験依頼者による治験においては治験責任医師及び治験依頼者に、自ら治験を実施する者による治験においては自ら治験を実施する者に、速やかに通知すること。

また、実施医療機関の長は、治験審査委員会の決定について、治験依頼者による治験においては治験責任医師及び治験依頼者に、自ら治験を実施する者による治験においては自ら治験を実施する者に、文書で詳細に説明すること。

 
 
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