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電子的臨床検査情報収集
(=臨床検査情報の電子的収集)のこと。

EDCとは、主に治験において用いられる用語で、臨床検査値等の治験データを初期段階から電子的に収集し、管理すること

また、EDCのためのシステムを、
「Electronic Data Capture (EDC) system」
「EDC system」
と呼びますが、単に、「EDC」と呼ぶことも多いので紛らわしい。

具体的には、

治験で得られた臨床データを、

担当医師または治験スタッフが、
直接パソコン等の端末に打ち込み、

製薬企業やCROが、
リアルタイムでそれらのデータを
常時監視・チェックすることにより、

治験のスピードアップと効率化の実現を目指した仕組み。

→ CRF(症例報告書)

→ CRFの抱える問題点

→ データマネジメント(DM)

 
 

従来の治験では、治験施設側の医師や治験スタッフ等が試験データをCRFに手書きで記載していました。

製薬企業やCROのモニターがCRFを回収後、目視によるQCチェックを経て、また、モニターが治験施設に直接出向いてCRFを戻す、という作業が、何度も繰り返されていました。

CRFデータ固定後(確定後)、ようやくデータマネジメント部門で入力を行い、統計解析部門で解析することができるのです。

このように、治験で得られたデータに関わる全行程において、膨大な時間と手間と人手を要します。

このような手間のかかる複雑な作業手順こそが、日本の治験スピードが海外に比べて遅く、しかも割高である要因の一つであるとさえ言われてきました。

そこで、どうせ後で入力するのであれば、初期段階から電子カルテのように、実施施設側のパソコンに直接入力してしまったほうが、効率的で管理しやすいはずだという発想が生まれます。

そこで、先行する海外にならって、日本でもEDCの導入が始まりました。

EDC導入に積極的なのは、合理的な方法を重視する外資系製薬企業でです。

自社が海外治験で使用しているEDCシステムをそのまま日本に持ち込むだけで済みますし、それにより、世界統一方式による効率化メリットが生まれます。

国内製薬企業も、国内より先に海外で治験を行う場合や、世界同時治験が増えています。

すでに海外での治験において外注している海外大手CROが採用しているEDCシステムがあり、それを海外だけでなく、国内でも利用すればいいだけなので、EDC導入の環境は、実はすでに整っているのです。

 
 

@ 早期データクリーニング

データが初期段階から電子化されているので、入力段階から、

● 入力漏れチェック
● 入力ミスチェック
● 整合性チェック

などを行えます。

早い段階から、プログラムによる確実なチェックが行えるので、データ精度が向上し、治験の品質も上がります。

A 異常値の確実な発見

データが電子化されているため、事前にプログラミングしておくアラート機能により、異常値を即座にかつ確実に発見できます。

それが入力ミスによるものか、本当に異常な測定値なのかによって、担当医師及びモニタリング担当者が、迅速かつ的確に対応できます。

B リアルタイムQC

プログラミングによるチェックができないような項目であっても、常に最新の症例データが本部側で確認できるため、ほぼリアルタイムのQCチェックが可能になります。

→ 品質管理(QC)

C 製薬企業やCROにおける、CRFデータ入力の作業と、そのための人員・部門が不要になります。
 
● スピード向上
● コストダウン

D 電子変更履歴
 
最初から治験データが電子化されていることで、データの変更・修正履歴を、確実に電子的に保持できます。

担当医師がいつ、どのデータを修正したかが、すべて明確化される。

● 再現性の向上
● データ精度の向上

E イレギュラーデータ作業の防止

紙媒体のCRFのように、記入欄外などのスペースに、余計なことを担当医師が記入することがなくなります。

その結果、データマネジメント上のイレギュラーな対応が減ります。

もちろんそれは、モニタリング担当者の負担を減らすことにもつながります。

→ データマネジメント(DM)

 
 

製薬企業(治験依頼者)のメリットとしては、

●モニターによるCRFの回収作業
●回収後のコンピュータへの入力作業

の省力化により、

治験業務の効率化
(開発期間の短縮、開発コストの削減)

また、
モニタリングの質の均質化と向上、
データ入力時の入力ミスチェック等により、
治験の質の向上 が期待できます。

SDV
(=カルテなどの原資料の直接閲覧による
   症例報告書の検証)
が不要になれば、製薬企業やCROのモニタリング担当者の仕事量は激減し、人的コストの削減が可能となると予測されています。

2004年3月に開催された、治験推進講習会(大阪医薬品協会主催)では、EDCの導入によって1製品当たり4.5〜6か月、開発期間を短縮できる、との報告がありました。

つまり、EDCは国内の治験において、「安い、早い、うまい」を実現する、絶好の手段(ツール)と言えます。

→ 原資料との照合・検証(SDV)

→ 治験モニタリング担当者(CRA)

 
 

最近は、SMOの進出により、クリニックレベルの医療機関でも治験を実施するようになってきていますが、EDCを導入できるような環境ではない医療機関が、まだ少なからず存在するとのことです。

その結果、EDCを治験に導入しても、実際にEDCを使えるのは大規模の医療機関だけで、小規模の医療機関では従来の方法で治験を実施する、という混在した状態も生まれています。

EDCと従来の方法が混在すると、管理が複雑になり、単独で実施する場合よりも、手間が増えて、何のために導入したのかわからない、という本末転倒に陥ります。

だからといって、EDCの使用にこだわると、
医療機関を選定する際に、大規模の医療機関に限定されてしまいます。

EDCの開発・ノウハウ取得のためのテスト運用というのであれば、大規模施設だけでも良いのですが、実際的ではありません。

今後は、医療機関でのEDC導入環境の整備が課題です。

→ 治験施設支援機関

 
 

@ 治験実施施設のメリット

● プロトコルの逸脱防止

● 症例報告書(CRF)に相当する
  症例データ入力時点での
  データの質確保
  (CRFへの転記ミスや記入漏れの防止)

A 治験実施施設のデメリット

治験実施施設サイドで、CRFデータの入力作業が発生するため、入力担当者の配置が必要です。実際には、CRCが兼任する場合が多いようです。

使い勝手の悪いEDCシステムだと、

● 逆に手間と時間ばかりかかる

● システムの故障や不具合による作業中断

といった問題点もあります。

→ 治験コーディネーター(CRC)

 
 

EDCを導入した治験が増えてきていますが、それらの大部分では、CRFのデータとして、治験実施施設でパソコンに入力するものの、入力されたデータを結局紙にプリントアウトし、医師が捺印又はサインしたものを
治験の症例報告書(CRF)の原本として担保する方法が通常用いられています。

しかし、EDCがめざす最終的な姿は、紙(プリントアウト)を一切使用せず、電子カルテから自動的にCRFが作成されるシステムです。

● データの手入力(入力ミスの可能性)

● 紙媒体による検査データ管理
  (資源と労力の無駄)

があるうちは、まだまだ真のEDCとは言えません。

 
 

EDCの普及により、治験におけるモニターの仕事量が減るということは、製薬企業のモニター削減、CROへのモニター業務の発注の減少が考えられます

製薬企業及びCROにおける、モニター職の失業者増加が予想されます。

優秀なモニターが少数いれば事は足りるということです。

CROとしても、従来のモニターを増やして、売り上げを伸ばす、という単純なビジネスモデルが成り立たなくなるでしょう。

規模の大きいCROは既に次のビジネスモデルとして、EDCの開発・導入に力を入れています。

 
 
インターネットというオープンなインフラを利用して、患者情報という機密性の高いデータを送受信するので、運用において、非常に注意が必要です。

(1)本人認証

データを送受信する、あるいはアクセスする人が、権限のある本人であることを高度に保証する信頼性の高い認証技術、例えば、バイオメトリクス認証(指紋、網膜、静脈)の採用が不可欠です。

(2)データの暗号化

インターネットの複数サーバーを経由している途中で、データを盗み見られたり、差し替えられないように、SSL(セキュア・ソケット・レイヤー)や、VPN(仮想プライベートネットワーク )のような暗号化通信技術の利用が必須です。

(3)データの信頼性・正確性の確保

医療機関の端末からデータ入力したり、電子カルテ情報を利用する場合、正しい情報が入力・利用される必要があります。

(4)21CFR Part11への対応

インターネットを介した電子的なデータ交換であるため、今後の国際的な臨床試験を実施する上で、米国で策定された、

→ 21 CFR Part11

に対応している必要があります。

・ 論理的セキュリティ
・ 監査証跡
・ 電子署名

→ 監査証跡

 
 
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