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何種類かの同じような薬効、あるいは、異なる薬効を持った成分を、1つの薬の中に配合した医薬品。

配合剤」とも言います。

複数の成分を組合わせることにより、単一成分による薬単剤)よりも、効果を高めたり、副作用を抑え安全性を高めたりすることができます。

合剤の中でも、副作用を抑え、同時に、作用が弱い(穏やかな)タイプの合剤は、「高齢者にとって安心して使える医薬品」として重宝されています。

 
 

医療機関で、
「効果は高いけど、胃が荒れるから、
 もうひとつ 別の薬出しておきますね〜」
と患者に言う場面がよく見受けられます。

製薬企業は、臨床の現場で他の薬と組み合わされて処方されることが予想される場合、単独の薬で処方できるよう、あらかじめ合剤として開発・販売します。

医療機関における合剤のメリットは、次の通りです。

● 医師の処方の手間が軽減される

  ※ 記載が1つで済む

● 記憶が楽

  ※ 処方する側は、
    複数薬剤の組み合わせを
    覚えておく必要がない

● 組合せを間違えるリスクの低減

● 保管スペースを節約できる

 
 

製薬企業としては、「医師・医療機関が使いやすい医薬品」として改良し続けることにより、販売量の増加が期待できます。

開発コストの節約というメリットもあります。

合剤の開発においても、やはり臨床試験は必要とされますが、小規模な試験や限定的な試験だけ済む場合も多いからです。

そのため、他の全くの新規化合物による治療薬と比較して低コストで開発できます。

また、当該医薬品の特徴も、これまでの単剤による使用によって、ある程度明らかになっているので、未知の副作用の発現による開発中止のリスクも低い

さらに、合剤はジェネリック対策にも有効です。

新規開発の合剤には新しく特許が認められ、単剤における薬効成分の特許が切れても、合剤のジェネリックについては製造できません。

少ない開発費用(研究開発〜治験までのコスト)で、法的な保護期間を延長することができ、ジェネリックメーカーを気にせず、既存製品ブランドのてこ入れと共に寿命を延長できる、というメリットがあります。

まさに、合剤の開発は、製薬企業にとって、
財務的リスクを回避できる安全パイであり、
1粒で2度 おいしい戦略だといえるでしょう。

 
 

患者にとっても、合剤のメリットは多く存在します。

処方された複数の薬(単剤)を服用するよりも、合剤は手軽(簡単)に服用でき、QOLが高いからです。

服用ミス(一方薬剤の飲み忘れや服用比率のミス)を防げる点でも安全です。

また、作用が弱い(穏やかな)タイプの合剤は、高齢者にとって安心して服用できるというメリットもあります。

また、単剤を別々に処方される場合に比べ、配合剤の方が価格が安い、つまり、薬剤費の自己負担額が軽減される、といった経済的メリットもあります。

 
 

例1)

例えば、パーキンソン治療では、有効成分(L-ドーパ)が目標部位(脳)に達するまでに分解されないように、分解を阻害する別の成分(L-ドーパ阻害剤)と配合するタイプの合剤が用いられます。

この場合、単剤に比べ効果は4〜5倍に達すると言われています。

例2)

異なる疾患ではあっても互いに関連している場合、同時に複数の疾患に罹病した患者が多く存在します。

この場合、それらの疾患をひとつの医薬品(配合剤)で同時に治療することにより、患者の疾患全体の発症リスクを低下させることができます。

例えば、高血圧症治療薬と高コレステロール血症治療薬を配合剤にすることにより、これら2つの疾患を同時に治療でき、患者の心血管疾患全体の発症リスクを低下させることができるのです。

なお、このように複数の疾患の治療薬を組み合わせる場合、医師の処方の柔軟性(自由度)を保証するため、複数の用量の組み合わせによる合剤(配合比を変えた複数の合剤)を販売するといった現場への気配りも必要になります。

 
 
一見、良いことずくめのような合剤ですが、
デメリットもあります。

(1)患者・医師にとってのデメリット

単剤に比べて効果が弱いため、単剤ほどの症状の改善が望めません。

中には、最低限の効果しかない、という批判さえあります。

また、万が一、配合剤の投薬によって副作用が生じた場合、どの成分によるものなのか、または、成分間の相互作用によるものなのか、原因の特定が難しくなります。

(2)医師のデメリット

あらかじめ一定の割合に配合されているので、特定の成分のみ量を増やすことができません。

そのため、投薬治療の柔軟性、つまり、投薬計画の自由度が失われてしまいます。

結果的に治療が進展しなければ、患者にとってもデメリットなのです。

 
 
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