医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令
(医療機器GCP)

 実施医療機関の長は、治験を行うことの適否その他の治験に関する調査審議を次に掲げるいずれかの治験審査委員会に行わせなければならない。

一 実施医療機関の長が設置した治験審査委員会

二 一般社団法人又は一般財団法人が設置した治験審査委員会

三 特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人が設置した治験審査委員会

四 医療関係者により構成された学術団体が設置した治験審査委員会

五 私立学校法(昭和二十四年法律第二百七十号)第三条に規定する学校法人(医療機関を有するものに限る。)が設置した治験審査委員会

六 独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人(医療の提供等を主な業務とするものに限る。)が設置した治験審査委員会

七 国立大学法人法(平成十五年法律第百十二号)第二条第一項に規定する国立大学法人(医療機関を有するものに限る。)が設置した治験審査委員会

八 地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人(医療機関を有するものに限る。)が設置した治験審査委員会

2 前項第二号から第四号までに掲げる治験審査委員会は、その設置をする者(以下「治験審査委員会の設置者」という。)が次に掲げる要件を満たすものでなければならない。

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一 定款その他これに準ずるものにおいて、治験審査委員会を設置する旨の定めがあること。

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二 その役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。次号において同じ。)のうちに医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療関係者が含まれていること。

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三 その役員に占める次に掲げる者の割合が、それぞれ三分の一以下であること。

イ 特定の医療機関の職員その他の当該医療機関と密接な関係を有する者

ロ 特定の法人の役員又は職員その他の当該法人と密接な関係を有する者

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四 治験審査委員会の設置及び運営に関する業務を適確に遂行するに足りる財産的基礎を有していること。

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五 財産目録、貸借対照表、損益計算書、事業報告書その他の財務に関する書類をその事務所に備えて置き、一般の閲覧に供していること。

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六 その他治験審査委員会の業務の公正かつ適正な遂行を損なうおそれがないこと。

 
 

1 実施医療機関の長は、次の1)から8)に掲げる治験審査委員会より、治験ごとに適切な治験審査委員会を選択し、調査審議の依頼を行うこと。

1)実施医療機関の長が設置した治験審査委員会(複数の医療機関の長が共同で設置したもの及び他の医療機関の長が設置したものを含む。)(第1号)

2)一般社団法人又は一般財団法人(以下「一般社団法人等」という。)が設置した治験審査委員会(第2号)

3)特定非営利活動促進法の規定により設立された特定非営利活動法人が設置した治験審査委員会(第3号)

4)医療関係者により構成された学術団体が設置した治験審査委員会(第4号)

5)学校法人のうち附属病院等を有する私立大学が設置した治験審査委員会(第5号)

6)独立行政法人のうち医療の提供等を主な業務とする独立行政法人(独立行政法人国立病院機構本部、独立行政法人労働者健康福祉機構本部等)が設置した治験審査委員会(第6号)

7)国立大学法人のうち附属病院等を有する国立大学が設置した治験審査委員会(第7号)

8)地方独立行政法人のうち附属病院等を有する公立大学等の地方独立行政法人が設置した治験審査委員会(第8号)

2 実施医療機関の長は、適切な治験審査委員会を選択するために必要な手順を定めるとともに、調査審議を行うために十分な人員が確保され、かつ、倫理的、科学的及び医学的観点から審議及び評価することができる治験審査委員会を、治験ごとに適切に選択し、調査審議の依頼を行うこと。

また、実施医療機関の長は、治験審査委員会に関する必要な情報を入手するなどして、治験の開始から終了に至るまで一貫性のある調査審議を行うことができる治験審査委員会を選択し、調査審議の依頼を行うこと。

3 治験審査委員会は、以下の事項を適切に判断できるものであること。

1)実施医療機関が十分な臨床観察及び試験検査を行うことができるか否か。

2)緊急時に必要な措置を採ることができるか否か。

3)治験責任医師等が当該治験を実施する上で適格であるか否か。

4)その他調査審議の対象となる治験が倫理的及び科学的に妥当であるか否か及び当該治験が当該実施医療機関において実施又は継続するのに適当であるか否か。

4 治験審査委員会は、上記3の1)から4)までの判断を行うに当たり、当該実施医療機関の職員等から必要な情報を入手する等により、これを的確に行うこと。

 
 

1 第1号においては、治験審査委員会の設置及び運営は、公益事業、特定非営利活動に係る事業等として行われるべきものであり、収益事業として行われるべきではないことから、定款又は前項第4号の学術団体(以下「学会」という。)のうち法人格を有しないものにあってはこれに準ずるものにおいて、治験審査委員会を設置及び運営する旨を公益事業、特定非営利活動に係る事業等として明記すること。

なお、治験審査委員会の設置及び運営に係る具体的内容については、定款等に明記することで差し支えないこと。

治験審査委員会の設置及び運営が一般社団法人等又は特定非営利活動法人の目的を達成するために必要な事業であるか否かは、あらかじめ、それぞれ当該法人の主務官庁又は所轄庁に確認しておくことが適当である。

2 第3号は、被験者の安全性や治験の信頼性が損なわれる恐れがないよう役員構成について一定の要件を求めたものである。

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1)第3号イの「当該医療機関と密接な関係を有する者」には、当該医療機関を設置する者(法人である場合は、その役員)、当該医療機関の長その他当該医療機関と雇用関係のある者などが含まれる。

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2)第3号ロの「特定の法人」には、営利法人のみならず、一般社団法人等、特定非営利活動法人その他の非営利法人を含む。

また、「当該法人と密接な関係を有する者」には、当該法人の役員及び職員のほか、当該法人の子会社の役員、職員等当該法人に対し、従属的地位にある者を含む。

3 第4号の趣旨は、治験審査委員会を設置する者(以下「治験審査委員会の設置者」という。)は、会費収入、財産の運用収入、恒常的な賛助金収入等の安定した収入源を有するものであること。

ただし、医療機器製造販売業者等、開発業務受託機関(CRO)、治験施設支援機関(SMO)、医療機器に係る業界団体等からの賛助金(物品の贈与、便宜の供与等を含む。)等については、治験審査委員会による治験の実施又は継続の適否についての意見に影響が及ばないと一般に認められる範囲にとどめること。

4 第5号は、法人格を有しない学会においては、第5号に掲げる書類に準ずる財務に関する書類を事務所に備えて置き、一般の閲覧に供することが必要である。
 
 

5 第6号の「その他治験審査委員会の業務の公正かつ適正な遂行を損なうおそれがないこと」には以下の事項が含まれる。

1)治験審査委員会の設置者の役員に、当該治験審査委員会に調査審議の依頼を行う実施医療機関の長又は当該実施医療機関の治験責任医師、治験分担医師若しくは治験協力者又は当該治験審査委員会による調査審議の対象となる治験の治験依頼者の役員、職員その他の治験依頼者と密接な関係を有する者若しくは自ら治験を実施する者その他の自ら治験を実施する者と密接な関係を有する者を含んでいないこと。

なお、完全に含まないことが現実的ではなく、一部含んでいたとしても調査審議の透明性・中立性が確保されることが保証される場合にあっては、この限りでない。

ただし、医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令等の一部を改正する省令(平成21年厚生労働省令第68号)による改正前のGCP省令第46条の規定により、当該実施医療機関に治験審査委員会を設置することができないと判断した場合であって、当該実施医療機関の長が役員となっている一般社団法人等又は学会が設置する治験審査委員会に調査審議を行わせる場合には、この限りではない。

〈参考〉

○ 改正前のGCP省令(抜粋)
(治験審査委員会の設置)

第46条

 実施医療機関の長は、治験を行うことの適否その他の治験に関する調査審議を行わせるため、実施医療機関ごとに一の治験審査委員会を設置しなければならない。

ただし、当該実施医療機関が小規模であることその他の事由により当該実施医療機関に治験審査委員会を設置することができないときは、当該治験審査委員会を次に掲げる治験審査委員会に代えることができる。

一 当該実施医療機関の長が他の医療機関の長と共同で設置した治験審査委員会

二 民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の規定により設立された法人が設置した治験審査委員会

三 医療関係者により構成された学術団体が設置した治験審査委員会

四 他の医療機関の長が設置した治験審査委員会(第一号に掲げるものを除く。)

2)治験審査委員会の設置者の役員に、当該治験審査委員会による調査審議の対象となる治験との関連の有無を問わず、医療機器製造販売業者等、開発業務受託機関(CRO)、治験施設支援機関(SMO)、医療機器に係る業界団体等の医療機器の開発に関わる営利法人や営利団体の役員、職員その他の当該法人又は団体と密接な関係を有する者を含んでいないこと。
3)治験審査委員会の設置者の役員に、一般社団法人等、特定非営利活動法人及び学会のうち、当該法人等の事業として当該治験審査委員会による調査審議の対象となる治験における機械器具等の開発に関連する事業を行うものの役員、職員又は会員その他当該法人等と密接な関係を有する者を含んでいないこと。
4)治験審査委員会の設置者の役員構成は、上記1)から3)に定めるほか、被験者の安全性や治験の信頼性が損なわれる恐れがあるとの疑念を抱かせるものでないこと。

5)治験審査委員会の設置者が収益事業を行う場合においては、当該収益事業は、以下の条件を満たす必要があること。

ア)治験審査委員会の設置及び運営に必要な財産、資金、要員、施設等を圧迫するものでないこと。

イ)収益事業の経営は健全なものであり、赤字を生じないこと。

ウ)収益事業からの収入については、一般社団法人等、特定非営利活動法人又は学会の健全な運営のための資金等に必要な額を除き、治験審査委員会の設置及び運営を含む公益事業、特定非営利活動に係る事業等に用いること。

6)治験審査委員会の運営を有償で行う場合は、実施医療機関からの審査料を対価とすること。

この場合においては、対価の引下げ、治験審査委員会の質の向上のための人的投資等により収入と支出の均衡を図り、一般社団法人等、特定非営利活動法人又は学会の健全な運営に必要な額以上の利益を生じないようにすること。

7)役員、社員又は職員等の人件費、退職金等は、一般社団法人等、特定非営利活動法人又は学会の資産及び収支の状況並びに民間の給与水準と比べて不当に高額に過ぎないものであること。

また、治験審査委員会の委員への報酬(旅費、日当等を含む。)は、一般の標準的な額から不当に高額に過ぎないものであること。

さらに、人件費の管理費に占める割合が適正なものであること。

8)治験の開始から終了に至るまで、継続的に治験に関する調査審議を行う体制を整えていること。

特定非営利活動法人及び法人格を有しない学会においては、合併の規定を設けることが望ましいこと。

9)治験審査委員会の設置者の行う事業として、調査審議の対象となる治験に係る機械器具等の開発に関わっていないこと。

この場合の「調査審議の対象となる治験に係る機械器具等の開発」とは、当該治験の広告業務、治験施設支援機関の業務等を含む。

10)調査審議の対象となる治験に関連する医療機器製造販売業者等、開発業務受託機関(CRO)、治験施設支援機関(SMO)その他当該治験と利害関係を有する者からの賛助金等(物品の贈与、便宜の供与等を含む。)を受けていないこと。

ただし、適切な利益相反マネジメントの実施等により、治験審査委員会による治験の実施又は継続に係る意見に影響が及ばないと一般に認められる場合はこの限りでない。

11)調査審議の対象となる治験に関連する営利企業の株式を保有していないこと。

ただし、適切な利益相反マネジメントの実施等により、治験審査委員会による治験の実施又は継続に係る意見に影響が及ばないと一般に認められる場合はこの限りでない。

12)治験審査委員会の設置者が公益法人
(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成18年法律第50号)第38条の規定による改正前の民法(明治29年法律第89号)第34条の規定により設立された社団法人又は財団法人をいう。)
である場合にあっては、「公益法人の設立許可及び指導監督基準」(平成8年9月20 日閣議決定)に定める基準に適合していること。
 
 
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