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承認された効能以外の目的で医薬品を使用することを「適応外使用」あるいは「適応外処方」と呼びます。

英語読みで、「オフラベルユース」と呼ぶ場合もあります。

また、 当局によって承認されていない用法・用量による医薬品の使用・処方についても「適応外使用」、「適応外処方」と呼びます。

 
 

医薬品の添付文書の「効能・効果(適応)」の項目には、当該医薬品の有効性が確かめられた疾患(「適応症」)が記載されています。

→ 添付文書

→ 適応症

しかし、実際の医療の現場では、この項目に記載されていない疾患(当局によって当該医薬品の適応症として承認されていない対象疾患)に対して、医師によって当該医薬品が投与される場合があります。

これらの適応外使用は、

● 海外で実際にその疾患に対する「適応薬」として処方され、有効性、安全性に関して確かな治療データがある場合や、

● 国内で数多くのエビデンスがあるにもかかわらず、行政による承認が得られていない場合などに、

担当医師の判断(裁量)によって、当該医師の責任で独自に行われています。

 
 

適応外使用のケースでは、保険診療としては認められず、「保険適応外」となり、患者同意のもとに行われる「自由診療」として扱われます。

→ 自由診療(混合診療

「適応外使用」では非常にお金がかかるので、現在承認されている治療法では効果が得られないような場合に、やむを得ず行われることが多いのが現状です。

時には、保険が適用されず高額な医療費がかかることから、患者のためを思った医師が、保健が適用される「適応症」と偽って診断して、「適応処方」する場合があるという問題も発生しています。

 
 

このような「適応外使用」の医薬品を保険適用できるようにするためには、製薬企業が当局に、当該医薬品の「適応症」の追加を申請し(「適応追加申請」)、それが承認されること(「適応追加承認」)が必要です。

これらを総称して「適応追加」と言います。

※「適応追加」のことを「効能追加」「適応拡大」と呼ぶ場合もあります。

もちろん、適応追加のためには、申請前に治験を実施して、その有効性と安全性を確かめなければなりません

しかし、適応追加のたびに治験を実施したら、費用と時間がかかること、特に既に薬価が下がっている場合は、治験コストすら回収できないことなどから、資金に余裕のない製薬企業は、適応追加にはあまり積極的ではありませんでした。

しかし、それでは、「適応外使用」による自由診療を受けるには、患者にとってかなりの経済的負担です。

また、お金に余裕のある患者しか治療が受けられないという、「治療機会の不平等と損失」の問題が起こります。

 
 

医薬品の処方においては、基本的に当局(厚生労働省)によって承認された適応(適応症)の範囲内で、承認された用量・用法に従って投与することが求められます。

もし、医師が安易な理由、不確かな根拠に基づいて、適応外使用・処方を行えば、重大な副作用をまねく可能性があるからです。

そこで医薬品の添付文書には、守るべき適応症、投与量、投与方法などが記載されており、医師は、基本的にそれに基づき処方します。

例えば、適応外使用・処方による医療事故に対して、最高裁で次のような判決が出ています。

「医師が医薬品を使用するに当たって、医薬品の添付文書(能書)に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り、当該医師の過失が推定される
(1996年1月23日最高裁判決)

この判例から、

● 患者の健康被害の防止の観点だけでなく、医師の自衛策という観点からも、むやみに適応外使用・処方はするべきではない

● もし、適応外使用・処方をする場合は、「合理的な理由・根拠がある場合」に限定するべきである

という考え方が主流です。

 
 

一見すると、先の最高裁判決は、高度専門職である「医師の裁量」を制限するように思われるかもしれません。

適応外使用の「合理的な理由・根拠がある場合」とは、次のような条件を満たす時です。

(1) 添付文書に記載されていない疾患・症状や、規定された以外の用法・用量で効果があるという、複数の科学的なエビデンス(医学論文、医学文献)が存在する場合

(2) 予測されるメリット(治療、熱・痛み緩和等)が予測されるデメリット(副作用等)を上回る、と合理的・客観的に判断できる場合

こうしてみると、ごく当然の条件だと言えます。

医師の単独個人的な経験よりも、医学論文で公開されている「エビデンス」のほうが、適応外使用の根拠としては、はるかに重要なのです。

 
 

本来、適応外使用・処方は、「治験」というエビデンスを作るステージにその役割を譲るべきなのです。

しかし、製薬企業側が適応拡大(効能追加)、用法・容量変更のための治験に積極的でない場合が多いのが現状です。

● 治験にお金がかかる

● 薬価が低く、治験実施費用を回収できない

● 市場があまり大きくなく、売り上げが見込めない

というのがその理由です。

そのために患者が適切な治療を受けられないという事態も起きています。

2003年より医師主導治験制度が導入されましたが、製薬企業が手がけないような、または、目や手が行き届かないような、新しい適応症、用法、容量を探る手段(制度)
として期待されています。

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