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2002年現在、DTC広告による「ブランド名告知」は、米国とニュージーランドでのみ許されています。

そのため、日本のDTC広告費は、米国に比べてごくわずかです。

2001年度のデータによると、米国のDTC広告費は約3100億円に上るのに対し、日本は約30億円にとどまっています。

一方、OTC薬広告費は、日本の約1700億円に対し、米国は約2900億円。
(日経ビジネス: 2002年12月18日
「外資の躍進が追い風になるか」参照)

米国では、DTC広告費がOTC薬広告費を上回っているのが特徴です。

 医療用医薬品の方がOTCに比べて利益幅が大きいので、その分、広告にも資本を投下するからです。

 
 

日本で、DTC広告が普及しないのは、米国と違って、DTC広告上でブランド名(製品名)を出せないからだと言われています。

→ 米国におけるDTC広告事情

→ 日本におけるDTC広告事情

日本では、一般の人の目に触れる媒体に医療用医薬品のブランド告知広告を出すことは、厚生労働省の行政指導によって禁じられています。

これは、専門知識を持たない患者に対して、広告等により治療情報を開示することは、医療現場に混乱を与え、保健衛生上の危害が発生する恐れがある、という国(厚生労働省)の考え方に基づいています。

医療現場における混乱とは、例えば、患者がDTC広告を見ることにより、中途半端な医薬品の知識や判断基準を得ることによって、医師が適切であると判断した医療用医薬品に対して、反対意見を持つ可能性が考えられます。

これにより、 医師と患者の信頼関係が損なわれることが予想されます。

マスコミに影響(洗脳)されやすい一般消費者は、DTC広告と医師のどちらを信じるでしょうか?

また、医薬系の専門教育を受けていない一般消費者が、DTC広告で流されるこれらの医薬品情報を正確に理解し、選択することができるのか? ということが挙げられます。

こうしてみると、一見すると、DTC広告の規制は、国による一般消費者(患者)保護の観点ではもっともな政策であるように思えます。

 
 

しかし、一方で、DTC広告規制は、一般消費者(患者)が医薬品情報を入手する機会、選択する機会を奪っているも事実です。

国としては、患者を保護しているつもりなのでしょうが、患者(一般)を馬鹿にした、患者(一般)の理解・学習能力を低く見た、余計なお世話な規則(規制)だとも言えるでしょう。

情報を規制するのではなく、むしろ大事なのは、

@ DTC広告だけでなく、様々な手段・媒体によって、患者が好きな時に好きなだけ医薬品・医療情報を入手できるような情報基盤(インフラ)を整備すること。

A 良い情報と悪い情報の見分け方を患者に教育すること。

なのではないでしょうか?

患者も当局が考えるほど馬鹿ではありません。

自分の生命・生活がかかっているのですから必死です。

まずは、「賢い患者」を育てることが、良い医療への第一歩なのです。

DTC広告が医療に対してもたらす、見落としてはならない大きな影響がもう一つあります。

これまで、患者が医師に対して、自分が処方して欲しい薬について発言することは、日本の医療の現場ではまずありませんでした。

医師が処方する薬を言われるがまま服用していたのです。

ところが、DTC広告によって、たとえそれによって得たのが生半可な知識であったとしても、医師に対して自分の処方希望を伝える、という場面が増えてくる訳です。

患者と医師が治療法について、意見や要望を述べ合うこと、それ自体が、日本の医療において偉大な進歩だと言えるのです。

 
 
DTC広告インデックス
1.DTC広告
2.DTC広告の規制
3.米国におけるDTC広告事情
4.日本におけるDTC広告事情
5.DTCの向き不向き
6.DTC広告のメリット
7.DTC広告のデメリット
 
 
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