賠償責任と補償責任

治験が原因となって治験参加者に健康被害が生じた場合、
製薬企業及び医療機関には、
「賠償責任」と「補償責任」が発生します。

賠償責任が、違法性を前提とした責任であるのに対して、
補償責任は、違法性を前提としない責任である点が異なります。

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なぜ、賠償責任と補償責任の2種類の責任があるのか?


「賠償責任」を問う賠償請求訴訟では、

(1)裁判等に時間がかかる

(2)裁判等に費用がかかる
   現実的に、高額の裁判費用を負担をできる人は少ない。

(3)因果関係の立証は被害者側がしなければならない

(4)因果関係の立証自体が難しい。

(5)健康被害発生当時の知識・技術水準からは、
   被害が予測できない場合は、
   企業には法的責任を問えない

等の理由から、

常に被害者側が不利になる
という悲しい現実があります。

(6)また、未知の副作用については、
   治験依頼者に対して法的責任を問えない

   (その時点の知識・技術水準で予期できないのであれば、
   それは、過失ではなく、当然、故意でもない。
   偶発的な事故は違法行為とは見なされない。)

そこで、
被害者を救済する為の社会的な責任として、
GCP等の立法的処置等により、
治験依頼者(製薬企業)に対して、
「補償責任」の実施が求められています。

実際、治験に参加中に起きた健康被害について、
賠償請求訴訟に発展することは非常に稀です。
被験者が死亡した場合や、
重度の後遺症が出た場合が殆どです。

それ以外の健康被害については、
補償の範囲でほぼ解決されているようです。
被害者救済という点では、
「補償制度」はある程度機能していると言えるでしょう。

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補償については、GCPにおいて次のように規定されています。

第14条 (被験者に対する補償措置)

  治験の依頼をしようとする者は、

  あらかじめ、
  治験に係る被験者に生じた健康被害
  (受託者の業務により生じたものを含む。)
  の補償のために、
  保険その他の必要な措置を講じておかなければならない。

 → GCP省令第14条

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