ファーマコゲノミクス(Pharmacogenomics、PGx)

Pharmacology(薬理学)とGenomics(ゲノム学)の造語で、
薬理ゲノム学」と訳されます。
また、「薬理ゲノミクス」ともいいます。

ファーマコジェノミクス」と呼ぶ人もいます。

ファーマコゲノミクスとは、
ゲノム情報に基づいた
「個の医療(投薬)」と
「創薬研究開発」
を目指すことで、

特定の疾患群に対して
有効かつ安全な医薬品を探索・開発するために、
患者のゲノム情報(遺伝的特徴)の解析を行い
アプローチする手法
です。

具体的には、
特定疾患群の患者に共通な遺伝的特徴を把握し、
その疾患に最適な薬剤の開発を目指します。
さらには、
患者個々の遺伝的特徴の差異を把握することにより、
その遺伝子の特徴に最適な薬剤の開発を目指します。

また、薬剤投与に関して
ゲノム情報を広く臨床領域に応用すること
を研究する分野
という意味でも使われます。

この意味においては、
患者個々の遺伝的特徴を把握し、
個々の患者に最適な薬剤を選択し、
最適な用法用量で投与すること
(薬剤治療方針の決定)
を目指します。

ファーマコゲノミクスの重要な点は、
患者の遺伝子特徴の研究が、
あくまでも、
創薬及び薬剤投与に関して情報を得るために行われる
という点にあります。
従って、製薬企業及びバイオ企業など、
創薬側主導で行われる研究活動です。

関連用語:

フェノタイプ
 (遺伝情報に基づいて作られる生物の形態や性質)
ジェノタイプ
 (個人の遺伝子構成等)

→ ゲノム創薬 
→ プロテオーム創薬

→ トキシコゲノミクス
→ オーダーメード医療(テーラーメード医療) 

→ バイオインフォマティクス
→ ポストゲノム 
→ SNPs(スニップ:遺伝子多型) 
→ 遺伝子

→ リード化合物 
→ ランダムスクリーニング、ヒット化合物 
→ ターゲット・オリエンテッド・スクリーニング
→ コンビナトリアル・ケミストリー 
→ ハイスループット・スクリーニング 
→ ドラッグデザイン 

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ファーマコゲノミクスとオーダーメード医療

従来の医薬品は、
同じ疾患群の患者10人に投与しても、
良くてせいぜい7割の患者にしか効かないというものでした。
これは、各患者の体質(遺伝子)の差によるもので、
効く効かないだけでなく、
副作用が発生するかどうかも、
個人差がありました。
これも、各患者の体質(遺伝子)の差によるということが、
これまでの研究から分かってきました。

同じ患者群であっても、
薬剤の有効性及び副作用の発現が
個人個人の遺伝子に密接な関係があるのであれば、
逆に、
その患者の遺伝子に最適な
薬剤の投与及び
投薬法(用量・用法)の採用により、
有効性を最大限に高め、
かつ、
副作用の発現を最小限に抑えることができる

と考えられます。

ファーマコゲノミクスによって、
個人の遺伝子情報と薬剤の副作用・有効性の関連が
明らかになり、
それにより開発及び確立された
個に最適な薬剤及び投薬法」によって、
副作用の発生が抑えられ、
また薬剤の効果が現れないということが少なくなれば、
それは、
患者の命を救ったり
QOLを高めるだけでなく、
医療費の削減にも寄与する
と期待されています。

また、遺伝子の違いにより、
患者によって薬が効き始める時期に差がある
ということもわかってきています。

患者によって薬に対する反応開始時期が違うことが
事前にわかっていれば、
薬の投与スケジュールは当然変わってきます。

薬の効き始めが遅い為、
一見、薬が効かないと判断され、
別の薬に替えてしまって、
結果としてより治療効果の低い薬を使ってしまう
という事態を避けることができるでしょう。

ファーマコゲノミクスは、
オーダーメード医療とは切っても切れない関係にあると
言っても良いでしょう。

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ファーマコゲノミクスの意義

これまで研究開発されてきた薬剤の中には、
治療効果は非常に高くても、
副作用が強すぎる為、

開発を中断した薬剤
承認が下りなかった薬剤
販売されたものの、使用が控えられてきた医薬品

が数多くあります。

それらについても、
ある特定の遺伝子を持つ患者に対しては、
安全に投薬できるかもしれません。

ファーマコゲノミクスによって、
それらの薬剤が再び陽の目を見ることができれば、
患者にとって治療の可能性が高まる為、
非常に喜ばしいことでしょう。

また同時に、
その薬剤を開発した製薬企業は
研究開発費を回収することができます。

ファーマコゲノミクスは、
患者と製薬企業、
両者WIN−WINの関係を実現できるのです。

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ファーマコゲノミクスと治験

新薬候補物質が発見された時点で、
その薬剤の副作用が発現するような遺伝子が
事前に分かれば、
治験の被験者をリクルートする際に、
副作用が発現しそうな被験者を除外
することができます。

また、
その薬剤に対して治療効果が現れない被験者を除外

することもできます。
効果が現れる被験者だけ集めれば、
その薬剤の最大の効果が確かめられるはずです。

ファーマコゲノミクスの発展によって、
製薬企業は、
治験をより安全かつ効果的に実施することができるでしょう。

被験者としても、
副作用の可能性に怯えることなく、
安心して、治験に参加することができる
でしょう。
また、
治療効果の無い薬剤の治験へ参加する
という無駄なことをする必要がなくなります。

→ PG治験

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ファーマコゲノミクスと新薬開発

副作用の発現の可能性が高い患者を避けて治験を実施し、
重篤な副作用発現による開発中止のリスクを下げられれば、
もともと効き目の低い患者に対する治験を回避できれば、
製薬企業における新薬開発リスクも下がります。

結果的に薬剤価格の抑制、
ひいては医療費の削減が期待できます。

また、ファーマコジェノミクスの成果を逆手にとって
新薬開発をするという方法もあります。
開発段階でファーマコジェノミクスを導入することにより、
使用対象となる患者群を限定しない薬剤
開発するのです。

全ての患者に対して、
安全な薬(副作用が現れずまたは少ない)
で、
かつ
ある程度の治療効果がある
というような「夢の薬」
もしかしたらできるかもしれません。

遺伝子多型の点からなかなか難しいかもしれませんが、
ファーマコジェノミクスにより、
副作用が少なく効果があることが証明されれば、
患者は安心して薬剤治療を受けることができるのです。

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ファーマコゲノミクスのメリット

製薬企業
患者
社会(国)
治験での
副作用
副作用、低い有効性による
開発中止のリスクを抑制
副作用のリスク軽減
治験参加の意義向上
副作用被害の抑制、
人命保護
市販後の
副作用
副作用等による
販売停止のリスクを抑制
副作用のリスク軽減
副作用被害の抑制、
人命保護、
社会的混乱の防止
副作用
補償
副作用補償費削減 副作用発生で、補償されないリスク自体が減少 副作用補償費削減
治療 確実に効果のある治療
無駄な服薬が減少
別の治療機会が増加
効果的な治療による
社会福祉向上、
労働人口の確保
市場・
受療機会
副作用の為、開発できなかった化合物を、対象者を絞って製品化 一部の人に強い副作用が出るために製品化されなかった、効果的な薬による治療が受けられる
開発コスト 研究開発、臨床開発の
無駄なコスト削減。
削減したコストを別の医薬品開発に使える。
薬剤価格の負担軽減 薬剤価格の抑制
薬剤費 薬剤価格の低下。
無駄な薬剤治療に対する出費減少
薬剤価格の抑制
無駄な薬剤費の削減
薬剤以外の医療費 無駄な治療による病状悪化に起因する医療費の出費減少 無駄な治療による病状悪化に起因する医療費の減少

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