→ 用語集インデックス
戻るボタン

ポジトロン(陽電子)を放出する生理的活性物質「ポジトロン薬剤」(PET薬剤)を体内に投与することにより、その挙動を画像としてとらえることで、体内を断層的に撮影する方法。

通称、「PET(ペット)」と呼ばれます。

PETに使う装置「陽電子放射断層撮影装置」は、通称「PET装置」 呼びます。

 
 

PETを用いた検査を「PET検査」と呼び、特に癌の早期発見方法として期待されています。

従来のX線装置(レントゲン等)やMRI装置、超音波診断装置が、体内の器官や組織の形状を個別に検査するのに対して、

PET検査は、体の機能や代謝の様子を、断層画像として、いっぺんに捉え、検査することができます。

PET検査では、ポジトロン(陽電子)を放出する特殊なブドウ糖
(FDG薬剤:フルオロデオキシグルコース)
(ポジトロン薬剤、「PET薬剤」ともいう)
体内に注入して、薬剤が臓器などの器官に集まる様子・代謝される様子を、PET装置で撮影します。

特に、癌細胞は他の正常な細胞に比べて、ブドウ糖を多く取り込む性質があることから、新しい「癌検査法」として注目されています。

癌細胞がブドウ糖を取り込む量は、正常細胞の3〜8倍と言われています。

 
 

PET検査では、条件が良ければ、ミリ単位の微少な癌を発見することが可能で、癌の早期発見に大きな威力を発揮します。

従来の診断では癌(腫瘍)の形を見つける方法のため、見落とすことがありました。

また、「治療効果の判定」などにも有効です。

ミリ単位の微少な癌を発見することが可能で、初発及び再発の癌病巣を正確に特定できるので、早期治療が可能になり、治療効果、回復の可能性が向上します。

一般に、がんは、直径1センチになるまでは、その人の年齢にもよりますが、10年から20年という長い年月をかけて、癌はゆっくり大きくなっていきます。

1センチ以内であれば、手術や化学療法、放射線治療等によって、治癒・完治の確率が高いと言われています。

癌は、1センチを超えると1〜5年間で急激に成長し、2センチを超えるともはや手遅れの段階と言われています。

CTやMRI、超音波検査では、直径1センチの癌から発見できるのに対して、PET検査では5ミリの癌から発見できるとされます。

癌が5ミリの時点で発見され、治療が開始されれば、1センチの時点で発見される場合に比べ、はるかに治癒・完治の確率は高まります。

PETによる癌検査では、各臓器ごとの検査ではなく、1回の検査で、しかも短時間で、全身の癌をくまなく検査できるので、検査方法としても効率的です。
1回の検査で、転移した癌が複数同時に発見できれば、それだけ、早期治療が可能になり、治療効果、回復の可能性が向上します。
PET検査では、腫瘍の良性・悪性を判別することができるので、わざわざ開腹・手術しなくても、以後の治療方針を検討・決定することができます。
PET検査によって、化学療法や放射線療法後の経過を追跡することにより、従来の他の検査法よりも、早い時期に治療効果を判定することができるので、治療方針の継続・変更等の検討・決定に有効です。

痛みを伴うのは、最初のPET薬剤を注射する時だけで、後は寝ているだけでいいので、比較的楽。

また、女性の場合、乳癌、子宮癌、卵巣癌などの癌検診において、内診、触診という不愉快な検査がありますが、PETであればそのような思いはしなくて済みます。

PET検査自体は、高価なものですが、癌を早期発見できるので、結果的に医療費の削減につながります。

日本アイソトープ協会PETワーキンググループが行った2000年試算によると、「大腸がん」を対象とした医療経済効果は、国内で年間65億8,071万円の節減、患者1人当たりでは 58万9,299円の節約となるそうです。

 
 

PET検査は、けっして万能の癌検査法ではありません。PETでは検出されにくいタイプの癌もあります。

@ ゆっくり進行するような活動性の低い癌

例えば、胃や腸の壁面に薄く拡がっていく高分化型の癌。

A 腎臓から廃尿器官に至るまでの器官の癌

PET薬剤が尿として排泄されるために集中することから、癌かどうかの判別がしにくいのです。

例えば、腎臓癌や膀胱癌、前立腺癌、尿管癌など

PETの分解能(いわば画質)は、CTやMRIの1/16しかないため、画質が不鮮明だという難点があります。

そのため、癌があるらしいことは分かっても、病変部位の形や大きさを正確に知ることはPET画像からだけでは困難。

CTやMRIの画像と合成して確認する必要があります。

 
 

CT」(Computed Tomography)は、エックス線を用いたコンピュータ断層撮影のことで、

体の断層撮影する点、放射線が関係する点において、PETと似ています。

CTは、体の外からX線を照射し、体を透過させて、体内の臓器・器官・組織のX線吸収度、あるいはX線透過度の違いを、センサーで計測しコンピューター処理することにより、体内の臓器・器官・組織の形状(輪郭)を断層画像化します。

体内の臓器・器官・組織の「形」を検査するので、「形態診断」と呼ばれています。

核磁気共鳴を用いた断層撮影である「MRI」も、「形態診断」に分類されます。

一方、PETは、体内物質であるブドウ糖などに、陽電子(ポジトロン)を発する放射性物質を目印としてつけた「PET薬剤」を体内に注入します。

PET薬剤が臓器・器官・組織に集まる様子、もしくは代謝される様子を計測し、その発する放射線の量をコンピューター処理することにより、PET薬剤の分布状態(密度)を断層画像化します。

PETは、体内の臓器・器官・組織の細胞の代謝などの「機能」を検査するので、「機能診断」と呼ばれています。

機能診断、形態診断のどちらにも長所・短所はあり、得られる断層画像も次元の異なるものなので、PET検査とCT検査あるいはMRIを組み合わせるのが、最も理想的だと言えるでしょう。

たとえば、微小がんの早期発見、再発、転移のチェックという目的の場合は、

PET検査の方が発見率が高いので、

@ まずは、PET検査をしてみる。

がんの可能性が高ければ、

A CTやMRIで、病変部位の場所や大きさ・形を確かめる。

という手順での検査方法が推奨されています。

 
 

一見すると大掛かりの検査のように思えますが、意外と検査は短時間で済みます。

@ 検査前は4〜6時間、絶食する。

A 医師による問診を受ける。

B ポジトロン薬剤(18F-FDG)を静脈から注射する。

C 薬剤が全身へ分布するまで約1時間安静にする。

D 検査前にトイレに行く

E PET装置で撮影

  約20〜30分間、
  寝ているだけで
  全身の撮影は終了する。
  痛みや不快感は無い。

F 30分ほど休憩した後、帰宅。

 
 

PET検査で保険が適用されるのは、従来の検査や画像診断などで確定診断ができないものに限定されています。

2005年3月現在認められているのは、
悪性腫瘍(がん)10種類、虚血性心疾患、てんかんの12疾患のみです。(2002年4月より)

したがって、
がんの早期発見を目的としたPET検査は、
保険適用外となり、
自由診療、つまり、
受診者が全額自己負担で検査を受ける
ことになります。

 
 

PET検査は高額だという印象もありますが、PET検査にCT、エコー検査を組合わせたコースで、10万円を切ったものも現れてきているようです。

一般に、
PET検査だけ   ・・・  8〜15万円
PET+総合検診 ・・・ 15〜23万円
(2005年3月現在)

 
 

ちょっと心配になるのが、X線検査同様、放射線被爆です。

1回のPET検査による被爆量は、X線による胃のバリウム検査の1/5〜1/3程度とされています。

これは、人間が自然界から1年間に受ける放射線量と同レベルなのだそうです。

 
 
マイクロドーズ試験
(MD試験)
マスバランス試験
(MB試験)
薬物動態試験(PK試験)
薬物動態学(PK、薬動力学)
 
 
戻るボタン
→ 用語集インデックス