→ 用語集インデックス
戻るボタン

目標とする患部(臓器や組織、細胞、病原体など)に、薬物を効果的かつ集中的に送り込む技術。

薬剤を膜などで包むことにより、途中で吸収・分解されることなく患部に到達させ、患部で薬剤を放出して治療効果を高める手法。

薬物送達システム」、
薬物輸送システム
などとも呼ばれます。

 
 

ドラッグ・デリバリーシステム(以下、DDS)は、薬剤の治療効果を高めるだけでなく、
薬物有害反応の軽減も期待できる、というメリットがあります。

→ 薬物有害反応(ADR)

通常、薬物は体内で吸収・分解されたり、
全身、つまり、患部以外の部位にも広範囲に拡散するため、患部に到達する薬物は投与されたうちの極微量であると言われています。

つまり、患部に薬物が到達できるかどうかは、いわば成り行きまかせで、人為的にコントロールできるものではありませんでした。

しかし、だからと言って、患部に到達すべき薬物量から逆算して、投与すべき薬物量を決めると、その投与量は非常に多いものとなり、薬物有害反応の発現リスクが高くなってしまいます。

一般的に、薬剤は、
必要な時に、
必要な量を、
必要な部位に、
到達させるのが理想とされています。

そこで、
薬剤を膜などで包むことにより、患部に到達するまでに吸収・分解されないようにして、過剰な薬剤投与を抑える技術
薬物伝達システム(DDS)
が考え出されました。

副作用を防止すると同時に、投与量も少なくて済むのでとても効率が良い技術で、薬剤の行き先もかなりコントロールできるので、最も期待されている投薬方法の一つとなっています。

 
 

DDSで中心となる技術は、ナノテクノロジー超微細技術)です。

→ ナノテクノロジー

微量の薬剤を包み込み、毛細血管の微小な穴を通り抜けることができる、数十ナノメートル程度のカプセル(ナノは10億分の1)。

このような「超微細物質」を作る技術は、手先が器用で精密機器の開発を得意とする日本には、まさにうってつけの技術だと言われています。

バイオ技術では米国に大きく差をつけられましたが、ナノテクノロジーでは、逆に米国に差をつけることができるのではないかと、 現在最も期待されており、産官学が連携して開発に乗り出しています。

そして、そのナノテクノロジーの応用分野として、最も利益が見込めるのが、医薬品開発分野なのです。

 
 

DDSの適用薬剤としては、副作用の防止、治療効果を高めるという点から、特に「抗がん剤」分野が期待されています。

例えば、抗がん剤でのDDSの仕組みは以下の通りです

@ がん細胞を発見して結合する性質を持つ特殊な分子を、微小カプセルの表面にあらかじめ付けておく。

A カプセルは毛細血管の微小な穴をなんなく通り抜ける。

B 患部に到達したカプセルは、がん細胞に付着してから、抗がん剤を放出する。

もちろん、他の疾患薬においても、ほぼ同様の仕組みです。

 
 

(1)封じ込め機能

運搬媒体(超微小カプセル等)に、薬剤を安定的に封じ込めること。

体内での運搬途中で、薬剤が漏れ出さないようにしなければなりません。

(2)非吸収機能

目標となる部位に至る途中で、消化管などから吸収・分解されないこと。

消化管からの吸収を避けるため、あらかじめ、別の物質に化学構造を変えておき、体内あるいは目標部位に到達してから元の化合物に戻って、薬効効果を発揮(活性化)するように、薬剤を設計しておく方法もあります。

このように科学的に修飾された薬剤を「プロドラッグ」と呼びます。

→ プロドラッグ

→ 徐放性製剤

(3)運搬機能

目標とする患部(臓器や組織、細胞、病原体など)まで、安定して確実に運搬できること。

目的の患部に確実に到達できなければ、どんなに薬効の優れた物質であっても意味がありません。

言い換えれば、目標となる患部以外には、絶対に到達しない、という性質です。

目的の場所にクスリを運ぶ性質のある運搬体(キャリア)が通常用いられます。

(4)活性機能

(3)のような運搬場所のコントロールができない場合の対処。

● 目標となる患部以外では作用しない

● 病巣部位においてのみ、活性化され効果を発揮する

という性質が必要です。

個々の細胞表面には、ある種の物質だけを引きつける(結合する)「受容体」(リセプター)というものが存在します。

例えば、癌細胞の受容体にだけ結合する物質がわかれば、その物質と結合させた薬物を送ると癌細胞にだけ集まるので、集中的に癌細胞だけを攻撃することができます。

→ 受容体(リセプター)

(5)放出機能

患部に到達した時点で、薬物を放出する必要があります。

薬剤が溶け出すタイミングを、投与してからの経過時間によってコントロールすることを、「放出制御」と言います。

目標とする患部にて、必要十分量の薬物を取り込めることが、薬剤の効果を高める上で、重要な要素になります。

ここで重要なのは、薬効が現れる濃度以上、毒性が現れる濃度以下の「必要十分量」の薬物を取り込めるかどうかという点です。

あまり高濃度の薬物が放出されると、逆に薬物有害反応を引き起こす可能性があります。

→ 薬物有害反応(ADR)

→ ターゲット療法

→ 製剤

 
 

先発品メーカーは、DDS(Drug Delivery System) 機能を薬剤に追加することにより、ジェネリックメーカーには簡単には追随できない、高機能かつ有効性の高い医薬品に変身させることができます。

これが、製品価値の最大化です。

 
 
医薬品のライフサイクル
医薬品のライフサイクルマネジメント
製品のライフサイクルマネジメント
物質特許
製法特許
(医薬品の)特許期間
ジェネリック
 
 
バイオアベイラビリティ
薬物動態試験(PK試験)
薬物動態学(PK、薬動力学)
ポピュレーションPK
PK/PD試験
薬力学(PD)
薬力学試験(PD試験)
臨床薬理試験
ADME(薬物の体内動態)
線形性
初回通過効果
血中濃度
最高血中濃度(Cmax)
最高血中濃度到達時間
(Tmax)
半減期(t1/2)
血中濃度曲線下面積
(AUC)
治療薬物モニタリング
(TDM)
平均滞留時間(MRT)
分布容積
線形性
治療薬物モニタリング
(TDM)
生物学的同等性試験
ジェネリック(後発品)
クロスオーバー法
溶出試験
臨床薬理試験
製剤学
薬物
医薬品
医療用医薬品
薬剤
薬理学
 
 
戻るボタン
→ 用語集インデックス